アイツと私、私とアイツ


寒い・・・・

寒い、寒い、寒い、寒い

どれくらいしかめっ面をしていたのか知らないが

もろに寒いと顔にまで出ていたらしく

「なぁに不細工な顔してんだよ

そう、仮にも女である私にこの男は言ってのけたのである

この垂れ目野郎!

ギラッと睨みつけてやると前に回りこんで脛を蹴ってやった

思いがけない反撃に溜まらず蹲って擦るジャンを尻目に一足先に は東方司令部から外に出た



外はまだ寒い、こんな寒い中外の巡回に行かなくちゃならないなんて

しかも、私を何故か女と思ってないのか 知らないけど、この同僚のジャンと

二人きりの、である・・・

私も少尉って言う地位から気軽に話せる事もあるが

私の方がいくつか年下なのをいい事にてんで子供扱いしている

女扱い以前の問題だ、だけどこれも何時もの事なのでいい加減慣れた

慣れたくないんだけど・・・

何て本日五回目だろうか、溜息を付いていると後ろから

「うわっ」

首筋を冷たい手が触れる

びっくりして振り返ると何故か上機嫌な顔が目の前に飛び込んできて



「な、なによ」

こういう顔をしている時は何か企んでいる

私の女の勘がそう言う

案の定ジャンはにっと咥え煙草をしていたかと思うと足元に落とし踏み消し

ぐわしと急に腕を掴んだかと思うとずんずんと街の方角ではなく、反対の自然公園や余り人家のない方へ足を運ぶのである

な、なんなの?!

「ねえちょっ、ジャンってば、何処につれてくつもりなの?」

「ちょっとそこまでだ、いいからお前は付いて来いって」

それだけ言うとまた黙り込んで先へ先へと進むのである

訳が解らないよ本当に

困惑していたが諦め、掴まれた箇所がやけに熱く感じながらただ、私も黙々と後ろから従って歩き続けた

そうすると掴まれていた腕の力は多少緩まれ一度だけふと





「・・・・っ」






不覚にも、一瞬だけ此方を振り返ったときのジャンが余りにかっこよく微笑んでくれたのでつい






ほんの、ちょっとだけドキッとしてしまった。






本当に・・・不覚。







それから程なくしてついた先は、少し丘の方に位置する教会

やけに、賑やかと言うか、着飾っていた女の人や男の人が居る

もしかして、と周りを見渡した後ジャンの方を見ると

「丁度間に合ったみたいだな、ほれ・・見てみ」

指差す先は教会の入り口から丁度現れたこの主役とも言える新郎新婦が登場した

これを、見せたかったの?

意図する物が何か解らなかったが、素直に一言

「綺麗・・・」

「・・・だなぁ」

傍らにジャンも立ちながら、手をいつの間にか離して居て、腰に手を当て空いてる片手でまた煙草を咥え始める

それを横目で黙認しながら素早く奪い取ってやる

目線はそのまま新郎新婦の方へ注がれていて。

そうすると思いっきり溜息を付いたのが聞こえたがムシムシ

「・・・・て、え?」

また綺麗だなぁ、と純白のドレスに包まれていた新婦の方を見ていたら、結構離れている所から見ていたのだが視線が合う

にっこりと笑いかけられたかと思うと持っていた花束のブーケを此方に向けて投げてきた

「ちょっ、ええ?!」

嘘、と手をわたわたとさせながら後ろに下がってキャッチをした、と思ったら

「おいっ!?」

危ないと感じる前に後ろへ倒れかけた私の身体を後ろからしっかりと支えてくれた

と言うより、抱きすくめられていると言った方がこの場合は適切かもしれない

ああ、ブーツは凍った地面だと滑りやすいのよ!

内心悪態を付きながらもこの状況は結構恥かしい

「ごめん、ありがとうジャ、ン」

上を見上げて詫びようと顔を見たまま固まってしまう

「「・・・・・・・」」



――サアァァ

その瞬間冷たい風が頬を掠めた。





「・・・・そんじゃ、そろそろ帰るぞ」

「う・・・・うん」

頭が真っ白になったと言うか、何も言わないままその場を後にした。






「ねぇ・・・・」

「・・・・」

「ねえったら!!」

「何だよ」

自然公園の中をくぐりながら帰っていた私達

いくら経っても何も話そうとしないジャンに痺れを切らして話し掛けるが無視を決め込まれ

わざわざ回り込んで腕を掴むとようやく、視界に私を入れてくれた

でもその顔は不機嫌そうに眉間にはっきりと皺が刻まれている

「・・・何で怒ってるのよ」

「別に怒ってない」

「嘘、いつもならそっちから話しかける癖に」

「そういう時もある・・寒いし」

「じゃあ何でわざわざあんな所の結婚式を見せに連れてったのよ」

「・・・・・」

また黙るんですか

もう、と溜息を付きながら腕に抱えていたブーケに顔を埋める

「花粉が付くぞ・・・・」

「五月蝿いジャンの馬鹿、さっきから意味不明な行動ばっかとったと思ったら急に黙るし」

「・・・・・・意味不明って、何で解らないんだよ」

「・・・はい?」

ようやく何か話したかと思ったら、今度は私のせいなの??

一体何なのよ、本当にコイツの考えてる事がよく解らない

頭を抱え込むようにその場に蹲る

上からでかい溜息が漏れる

「・・・・何なのよ、本当に」

・・ふわりとちょっとだけ、煙草の匂いが漂いながら暖かい体温が伝わる

また、さっきと状況は違うが後ろから抱きしめられてしまった

同時に・・耳元に顔を寄せられ低い声でそっと





「      」





「・・・う、そ・・て言うか、ジャン?!!」

「あんな所に何とも思ってない女なんか連れてくかと思うか?」

「・・・・・」

「それに、キスなんかする訳ないだろ」

「う・・・」

カッと顔に赤みが差す

あの時・・後ろから支えてくれた時顔をあげると

真剣な顔したジャンが反対側から唇に・・

私と、キスをしたのである。

「もう、俺が何言いたいかくらい解ったよな、?」

そりゃ、いくら皆から鈍いと言われたってこれは・・

「わか、る・・と思う。でもっ」

「待てって、ちゃんと最後まで言うからさ」

やけに穏やかに話してくれるもんだから、ジャンがジャンじゃないみたいで

恥かしい・・・・・。

しかも先ほどから耳元で囁かれ吐息が掛かってくすぐったい

身を竦ませると何時もの意地悪い笑い声が漏れながら此方を振り向かされた

「やな、顔・・・」

「悪いな、地顔なもんで」

さして気にした風もなくそう言うと額を重ね合わされる

か、勘弁して欲しい・・恥かしすぎて顔から火がでる!!

必死に平静を装うがそんな余裕もなく顔を引き攣らせると益々笑い声が返って来る

「ジャン・・・笑わないでよ」

「はは、悪い悪い。だってお前があんまりにも可愛いからさ、まあそこも好きなんだけどさ」

ああやだっ何か大佐みたいで物凄く、大佐みたいで!

などとからかわれ悔しそうに睨んでいると肩を竦められ

「悪いふざけ過ぎた、けど大佐みたいとか思わんで欲しいな」

「え、なんでそれ知って・・・て」

「やっぱそう思ってたんだな」

嵌められた・・・チクショウ。

「まあ、取り合えず今は何も考えるな、つか男の話しはするな」

「いや、するなって・・職場関係でそれはふかの」

「…二人きりん時は極力すんな、気分ワリィ」

「あ・・・そう」

こんな真面目と言うか、まさかジャンと男と女な話しをするとは思ってなくて

ただ曖昧に変事を返しながら頷くしか出来なかった

この・・・眼がいけないんだ

真っ直ぐと此方を見詰めてくる、青い眼が

「話しの続き…流れでもう解ってると思うが俺は」

「う・・・うん」

ぎこちなく頷いて見詰めると

「・・・・・・・やめた」

「・・・・・・・・・はあ?!!」

等と抱きしめた身体を離して腕を掴んで立たせるのである

「ね、ちょっとジャン・・何??」

なんか、今日は本当に色々驚かされてる

困惑しきっていると口元を手でふさがれ、またそっと囁かれた

「後で帰った時、たっぷりとお前の部屋で聞かせてやるよ、何遍でも」

「っつ」

普通の娘なら此処で黙って伏いてる、だろう

だけどそれが余りにも臭くて恥かしくてもうどうしていいか解らなくて


「い、でえええ?!!!!」

・・・・グーで、しかもストレートで右頬に決めてしまった

溜めなしで・・・・・。

まさかそう来ると思わなかったのか涙目で此方を睨んでくるが、相手は地面に転がっている

「ご・・・ごめん、ジャン。つい・・ついこの手が」

「・・・・・・しろ」

聞き取れない声でぼそぼそと全て言葉を拾いきれない

え、と聞き返しながら腕を引っ張って起こそうとすると





「・・・・・・覚悟しろ、今夜まじで手加減しないからな?」

嫌とは言わせないと両腕を掴まれながら真顔で凄んでくる

「あ、いやだからちょっと待ってって、私まだ何も」

「俺だってまだ言ってない、だから俺が言った後お前も素直に俺の事好きって遠慮なく言っていいぞ」

「今あんたが言ってんじゃない!!」

「今のはノーカウントだ、てか否定しないって事はやっぱ・・」

ニヤ、と痛い筈なのに右頬を気持ち赤くしながら言い切った

「あ・・・・ぅ、あ」

「もう、言い逃れ出来ないよなぁ、これで?」

「でもあの、私今日はお母さんとこに泊まりに」

「クリスマス、なのにか?大丈夫だお母さんもきっとクリスマス、彼氏と宜しくやってるだろうと思う」

「いやだから何勝手に話し進めてんのよジャン!」

「あー」

「ちょっと人のは、むぐ?!!」

急に口を塞がれたかと思うとぐきりと上を向かせられた

己・・・覚えてろよジャン。

鈍い痛みに涙を堪えながら空を見る

・・・・・・・・・・あ

丁度鼻先に冷たい感触がすると、ちらほらと雪が降り始めていた





「ホワイトクリスマスって奴か、洒落てるねぇ」

「・・・・・・」

?やけに大人しいな」

何てアンタがこうしてるからでしょうと手の甲を抓ってやる

痛っと呻いてやっと解放され一息つき

「ぷはっ・・・そりゃ口塞がれてたら話せませんて貴方」

怒りを露にした声色で洩らすと

「悪い悪い。でもちっともお前が黙らないからさ」

「・・・・もう、いいよ・・いこ」

呼吸を整えながらさっさと立ち上がると意外そうな声をあげて

「何だ、反撃してこないのか?」

とか言って腕をだしてガードのポーズを取ってる

やっぱり蹴飛ばそうかしらと思うが今日は・・ね

「今回だけは見逃してあげる」

「お、そっか・・そりゃ良かった」

「その代り、ちゃんと…帰ったら言ってよ?」

「・・・・何を?」

またそう言って、解ってるくせにニヤニヤと笑い出した

悔しい、けど我慢

聞きたいから・・・・

「いいから、帰るの」

「ふーん?ま、いいか了解」

それ以上の追求は無駄かと判断したらしく頭をぽりぽりと掻くと、先行く私を追い掛け歩き



暫くして、ぽつり




「雪、綺麗だね・・・」

「うん、まあな…」











「ねえ・・・」





「んー・・?」




少し面倒になったのか投げやりな感じの声が返る




「手、繋ぎたい・・・・」





「・・・・・・・・・ああ」





ぎゅっと繋がれた手だけ、とても暖かかった。







メリー・クリスマス






―後日談


外に剥き出しになっている肌が寒い

もぞもぞと暖かい布団に擦り寄っていると後ろから暖かい腕が伸びて、腰に手を回す

ぴったりと背に身体を密着しながら、耳元でそっと囁く


「なぁ、

「なによ・・」

「ブーケ貰ってたよな」

ふいに今更何をと横で火のけのない咥え煙草をしている奴に向き直り

「そうだけど、それが?」







「・・・・・・・・・・・・・・・・結婚、してみっか?」






「・・・・・・へ」




まだ、時刻は夜、恋人達の夜はまだまだ此れから・・・。




――FIN――











誕生日にルイカ様からいただきました!
ハボ夢〜同僚としてのポジションらしく・・・vおいしい役どころで!!
どうぞ空白の「」はお好きにご想像下さいとのことなので皆さん一緒に想像しましょう!(笑)

このハボ様。ヒロインが大佐(というか他の男)の話したらヤキモチやくんですよ。素敵すぎる・・・!
ルイカ様のドリームにはいつもハマらせていただいてますvv


ルイカ様、ありがとうございました!
2style.net