ぽたり、ぽたり。

観月の少し癖の有る髪からは雫が滴り落ちていた。
観月は其れをぼうっと眺め、何度目かも分からない溜息を付いた。

時計は既に1時を指している。

暗い路地に一人佇むその姿は、常識から逸脱した雰囲気とそこはかとない異質さ、神聖さを醸し出している。
雨がさあさあと彼に降り注ぎ、彼を頭の頂点から爪先までどっぷりと濡らしている。

観月は雨を、全身を持って受け止めていた。

暗雲のたちこめる空を仰ぎ、だらんと降ろした腕の両手の平を僅かに上に広げ降りしきる雨を浴びていた。


辺りには、誰も居ない。


この辺りはオフィス街で、昼間ならばともかく、深夜ともなると人通りは皆無に等しい。
観月は其の事を見越した上で、この場所に佇んでいた。

観月は寮を抜け出し、此れから荒れてくるであろう天気を気にする事も無く、唯、雨の中に出た。
普段の規律を重んじ、潔癖の気がある彼からすれば、此れは異常な行動だった。


「天にまします我等が神よ…」

ぽつり…、と観月は呟く。

「……神…、なんて。とんだ茶番ですね…」

この世に僕に対する救いはないというのに。

観月は上を向いていた顔を下に向け、乾いた笑い声をあげた。




「本当…如何しようも無いくらい……」




「馬鹿だね」


「えぇ、馬鹿です」


観月は顔を上げ無いまま、突然の返答にも当たり前のように答えを返した。


「其れに加えて我侭だ」


「そうですね」


すっと、傘が差し出された。
観月に降り注いでいた雨が、止んだ。


「はい」


観月は傘を受け取ろうとしない。


「不二君…君は良く分からない」

「それはお互い様でしょ?濡れるから、行こう?」

不二はやわらかい微笑を浮かべ、観月の手を取って傘を握らせた。
観月は其れを振り払おうとはしない為、不二はそれを肯定と取ったらしく、其の侭観月の手を引いて歩き出す。

「………」

「………」

さあさあと雨が降り注ぎ、傘にはじかれる音がやけに大きく聞こえる。
辺りは静謐に包まれ、先程とは違い緩やかな時間が流れる。

沈黙ではあるが、それは決して気まずさから来たものではないからだろう。

不二も、観月もその沈黙を破ろうとはしなかった。
















「観月」

沈黙の後、その雰囲気を壊さない静かな会話。

「…なんですか」

「試さなくていいよ」

「………」

「僕は観月が一番大切なんだから。ね?」

「貴方は馬鹿ですか?」

「君もね?」

二人はくすぐったそうにくすくすと笑うと、軽く唇を重ねた。









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甘っ……。書いてるこっちが恥ずかしいです///
暗い話と見せかけておいて実は甘いという話。
アレですか。見せかけの罠ですか。そうですか。

でも、観月さんはよく人を試そうとする人だと思う。


この雨があがったら、一緒に虹を見に行こう?
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