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―ずっと変わらないものが、あるの。 昔々、といっても10年程前のこと。 此の国のリゼンブールという東部の田舎町に、とある家族が中央から引っ越してきました。 その家族は、母と娘―それもまだ小さな―のみの世帯でした。 その家族の住む家の隣家 ― 隣と言えども田舎なものですので、100m程離れた位置にありまして ― には、その小さな娘とさほど年の変わらない、ふたりの兄弟(とその母親)が住んでおりました。 その兄弟は、友達が少なく ― 田舎なものですので… 友達と言えば近所の元気過ぎるわんぱくな女の子のみ ― 越してきたという娘に、興味津々で御座いました。 其処で早速、エルリック兄弟 ―兄をエドワード、弟をアルフォンスと言いました― は、娘に会いに行きました。 女の子は、ふたりが今までに見たことの無い、綺麗な紅茶のような髪に、深い茶色の瞳をしていました。 (この地域に、茶髪茶眼の者は居なかったのです。 金髪金眼の人々が殆どでした) あんまりに珍しく綺麗なので、兄弟は見とれてしまいました。 そして弟のアルフォンスが、兄のエドワードにこう話し掛けました。 「ねぇにいちゃん、あの子はおとぎばなしにでてくる女の子にそっくりだね、…髪がすごいきれいな紅茶いろだよ!」 「・・・そうだな、・・・たぶん、セントラルのほうの子だ、アル。 むこうには、あんな女の子がいるんだ、・・・ウィンリィとはぜんぜんちがう…」 女の子はそんな二人に気がついたのか、此方をじっと見つめています。 女の子は、真っ白いワンピースの裾をぎゅっと握り締め、どこか落ち着かない様子でした。 「・・・・いくぞ、アル。」 「うん、にいちゃん。」 ふたりは、女の子の方へ向かって駆けて行きました。 「ねえ、どこからきたの?」 アルフォンスが訊きます。女の子は少し驚いた様子で、 そして鈴の音のような声で、セントラル、と小さく答えました。 「オレはエドワード。・・・エドワード・エルリック。エドでいいや。 んで、こっちが弟のアルフォンス。アルってよばれてる。 っと、・・・・・・きみ、名前は?」 エドワードが訊きます。 そして女の子は、少し嬉しそうな表情を浮かべて、ゆっくりと微笑みました。 「わたしは、。・・・・。」 「・・・・あん時のは可愛かったよなあ。」 「・・・・あの時のエドは優しかったよねえ。」 なんと失礼な。 昔話をするといつもそうだ。今との相違点の多さに、文句を言いたくなってしまう。 昔は、何て素直な子供だったのだろう。素直でなければ子供ではないのかもしれないが。 「・・・ていうか、私は今のほうが可愛いでしょ?」 そう言ったら、エドがころころと笑った。・・・何て失礼なやつなんだ、こいつは。 (でも本当は優しいという事を知っているから、全否定は出来ないのだ、) 「・・・ばっか、ちげぇよ、見た目じゃなくて、性格。」 「〜〜〜〜…それならエドだって、昔はすっごく無邪気でさ、 私のことを、どっちがお嫁さんにするかどうかでアルと喧嘩したr、・・・むぐ。」 口を塞がれた。ソファに並んで腰掛けているエドに、左手でぐるりと首に手を回され、紡ぎかけた言葉を封じられた。 そんなこと知らねぇよ、と言い、そっぽを向く。 嘘つき。大抵そうやってそっぽ向く時は、意地張る時だということ、私は知っている。 「むぐ、・・・・・エドってば、きっとこれからもどんどん変わってっちゃうんだ、きっと」 私より少し大きな手を無理矢理引き剥がし、そう呟いた。 ・・・手だって、昔は私と変わらない大きさで。身長なんか、私より少し低いくらいだった。 昔はもうちょっと(まあ多少意地っ張りだったけれど)素直だったのに、今はそれに加算し照れ屋ときてる。ひどく厄介だ。 どんどん変わっていくエド。でも昔っから何にも変わらない私。 こんなのでいいのだろうか。 「・・・・・・お前だってどんどん変わってんじゃねぇかよ、…何つまんねぇこと心配してンだよ」 「つまんないって・・・だって、エドが私の知ってるエドじゃなくなっちゃうみたいで…寂しい、かも」 昔と今。変わるのは当たり前なのに。 其れを寂しいと感じてしまうのは、何時も一緒には居られないからだろうか。 変わらない事があれば、変わる事もある。時間の経過は、物事や人をそうさせる。頭では理解しているつもりだけれど。 少なくはない乖離が、寂しさを生み出す。 「・・・オレだってなぁ…お前がどんどん…その、可愛くなるのが心配なんだよ、・・・・・ もしオレ以外の奴に、とられたりしたら、…とか、〜〜〜〜〜・・・、あーもう!だから、 のことをずっと…好き…なのは変わらねえっていうことだ!解ったか!!」 驚いた。とっても。 5年ぶりくらいの素直(ちょっと聞こえ辛い部分もあったけれど)な発言だと思う。顔も、耳まで真っ赤で、それが何だかとても愛しく感じた。 「・・・・・私もエドのこと、ずっと好きだよ・・・多分ね」 「多分って何だよ」 「ほら、さっきエドが言ってたみたいにさ、私があんまり可愛くなって、モテるようになったら、ね?」 「・・・・前言撤回。やっぱかわいくねー。」 「まあまあ、そう言わずに。・・・ね、何処が変わった、私?」 「・・・・・わかんねえけど。なんか、女っぽくなった、かな」 「何それ。・・・エドは相変わらず小さいよね」 「・・・・・・おい!」 そういえば、こんな時間は変わらないな、ということにあの時の女の子は気付いたそうな。 *********************************************** Once upon a timeとは、昔々、というきまり文句らしいです。 しかしうちのエドはつっけんどんだなあ。笑 (20090717)chisha |