アリスは黄金の午後を夢見て





天気のすこぶる良い、昼下がり。
部屋に籠ってるのが勿体ない。…そうは思うけど、さ。

とある田舎町に滞在中。図書館(田舎のくせして、馬鹿デカいんだ)から、これもまた山程本を借りて来て、宿の部屋で兄弟揃って読み漁っていた。

だけど、訳在って鎧姿の弟―アルは買い出し。(…荷物いっぱい持てっからだよ、…ちっさくてわりかったな!)
ということで、部屋にはオレと妹…とは言っても双子なんだけど、だけ。
何を熱心に読んでるのかと思えば、(いや、だって珍しいから。)勿論錬金術関係…ではなく、物語らしき本。

「……はぁ」

溜め息。他に吐く物がない。(何なら嘘でも吐こうか?オレ、得意。)

「…何、溜め息なんて吐いて?」
「誰のせいだよバカ」
「何よ一体?バカエドのくせに」
「…お前一体何読んでんだよ?」
「………バレてた?」
「おぅ」


あはは、と笑うに。
つられて笑ってしまう。不覚にも、…昔から。
段々、笑顔とか、しぐさとか、…母さんに似てきたのは気のせいか?
ということは、こいつは女、ってこと。


「はい、これ」
「ん」


さっきまでの手にあった本を受け取り、パラパラと捲ってみると、何とも可愛らしい挿絵。
エプロンドレスの小さな女の子に、時計を持ってるウサギ。
王冠を乗せた女王に、にやにや笑ってる猫。


「……"アリス"?」

「うん、可愛いでしょ?」
「…なんだっけ、読んだことあるような…。ん?」
「ほら、昔三人で読んだでしょ?小さいとき」
「そんなような…気がすっけど、あんま覚えてねー。…えーっと、ウサギがアリスを追いかけて…」
「違う!逆!アリスがウサギを追いかけるの。それで大きな穴に落ちて、不思議の国に迷い込んじゃう、って話。」

あ、そうだ。

「…思い出した。…そんでそれは、夢だった、っつーオチか。」
「そうそう。」


あの時…
『夢だったらいみないじゃんか』
『もう、エドってゆめない!』


「…夢ならいーのにって思ったら、本当に夢だったんだな」
「なに、エドっぽくない。ロマンティストだね。…どこかの大佐さんみたい」
「うっせ。あんな色惚け無能大佐と一緒にすんな、ったく……んで、何で読んでんだよ?」
「んー…あたしもウサギ追い掛けてたんだなぁ、と思って。」
「…はあ?」



昔はそっくりで、瓜二つで、髪の長さが同じだったら本人同士にしか解らないくらいだったカオ。

だけど。
今は 女らしくて、オレより小さくて、どっちがどっちだか、みんな解って。
そのカオを、こっちに真っ直ぐ向ける。


「金色の、だいすきなウサギよ」

それはね、ちょっとちいさくて、いじわるで、うるさくて、でもつよくて、やさしいの。

ああ、もう、


「…ばーか。…追っかけてんのは、…」
「え、なになに?」
「…何でもねー。」
「もー、気になるでしょ!教えてよエド、ねぇねぇ」
「あーもーうるせー!!……やっぱウサギがアリス追い掛けてんじゃね、ってことだよ!」
「え、?」
アリスは、きょとんとして。
窓から黄金の光が降り注ぐ部屋で。
お茶会じゃないけど、それなりに優雅。(ものは言い様、ってね)


「オレとおんなじ、金色のアリス、だよ、」


ずっと追い掛けて、んだよ。

「ばか」
「ばかで結構。ったく、可愛くねーな。少しは本のアリスを見習え」
「うるさいなぁ、エドのくせに!」
「…さ、読書読書」


そう。オレらは優雅な、黄金に輝く午後を夢見てる、アリスとウサギ。
…目の前のものを いつまでも手に入れられない。(それも面白い、だろ?)

…いつか捕まえられる日は、たぶん来ないって、知っているんだけど、さ。
そしたら、これが夢であって欲しいって、願わないでいられないんだ。(マジで、現実逃避)


あー、もう本当にウサギになりたい気分だ。





アリスは黄金の午後を夢見て

(オレはきっと、世界で一番夢見がちな、)





 2010/??  きっと鋼の世界にもアリスの物語はある!!←








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